28/02/2026
【論文発表のお知らせ】
当医局(感染症内科学講座)の大学院を修了した西原悠二先生(現在成田赤十字病院)が筆頭著者を務めた論文 "Differences in β-lactamase activity and carbapenem resistance among the Bacillus cereus group" が、"Antimicrobial Agents and Chemotherapy"に掲載されましたのでご報告します。 https://journals.asm.org/doi/10.1128/aac.01302-25
【研究の概要】
セレウス菌は、食中毒や院内感染症(カテーテル関連血流感染症など)の原因となります。「セレウス菌」とは20種類以上の菌種をまとめた総称(Bacillus cereus group)であり、生化学的性状や質量分析などの通常検査では区別できませんが、次世代シーケンス(WGS)解析により詳細な菌種同定が可能です。
またB. cereus groupは、染色体性に2種類のβラクタマーゼ(ペニシリナーゼ:bla1と、メタロ-β-ラクタマーゼ:BcⅡ)を保有しており、特にグラム陰性桿菌で問題となるメタロβラクタマーゼの起源は、B. cereus groupが保有するBcⅡとされています。 本研究では、奈良県立医科大学附属病院(当院)で分離された48株のWGS解析を行い、以下の点を解明しました。
(1)菌種毎の薬剤耐性・耐性遺伝子のプロファイルの解明 48株は、Bacillus mosaicus、Bacillus luti、Bacillus cereus sensu strictoの3菌種に分類されました。その中で、B. lutiはBcⅡを保有しておらず、その一方で、他の2菌種に比較してアンピシリン、メロペネムのMICが高い傾向にありました。
(2)セレウス菌における、βラクタマーゼの酵素活性測定法を開発
外膜を持たないグラム陽性菌は、産生したβラクタマーゼを細胞外に放出します(グラム陰性菌では、ペリプラズムに留まります)。液体培地の上清を濃縮・ろ過することで、βラクタマーゼの定量的な酵素活性測定法を新たに開発しました。
(3)βラクタマーゼ発現には、「構成型」「誘導型」「サイレント型」の3タイプが存在することを発見
βラクタマーゼの発現量について、常に発現している「構成型」、セフォキシチン等の誘導剤により発現量が大きく増加する「誘導型」、誘導剤の使用に関わらず全く発現しない「サイレント型」の、3つのタイプに分類されることを新たに発見しました。
【研究の意義】
本研究は、WGSによる菌種同定と独自の酵素活性測定法を組み合わせることで、セレウス菌群の耐性が遺伝子の有無だけでは語れない多層的なものであることを解明しました。特に「サイレント型」や「BcII非保有のカルバペネム耐性株」の発見は、ゲノム情報と表現型の乖離を浮き彫りにし、次世代の診断・治療戦略におけるフェノタイプ解析の重要性を改めて定義するものです。さらに、メタロ-β-ラクタマーゼ(Subclass B1)の主要なリザーバーである本菌群での知見を積み重ねることは、現在臨床で最大の脅威となっているグラム陰性桿菌(CRE等)の耐性進化を理解し、その対策を講じるための重要な基盤となります。
なお、本研究の遂行にあたっては、中野竜一先生、矢野寿一先生をはじめとする微生物感染症学講座の先生方に多大なご指導を賜りました。 詳細はぜひ原著論文をご覧ください。
The Bacillus cereus group comprises gram-positive, spore-forming rod bacteria that are ubiquitously distributed in natural environments (1, 2). This group includes closely related species with high genetic similarity, such as Bacillus anthracis, Bacillus cereus, and Bacillus thuringiensis (3). B. an...