12/11/2025
【第15回リリー・オンコロジー・オン・キャンバス写真部門 優秀賞のご案内】
絵画・写真・絵手紙で想いを綴る「リリー・オンコロジー・オン・キャンバス」。
第15回写真部門 優秀賞 『挑戦』(北川 知彦さん)の作品をご紹介いたします。
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『挑戦』
2014年の夏に癌が見つかった。
「なんで俺が?」
麻酔を使った検査なのに先生の声が聞こえた。
「大きいなあ。」
その時、頭に浮かんだのは
子供たちの成長を妻と一緒に見られなくなるという絶望的な結末だった。
ベッドの上で鳴咽していた。
看護師の方が身体をトントンと優しく叩いてくれたことを覚えている。
すぐに手術で癌を取り除き5年が過ぎ寛解となったが
6年後の2020年夏に仙骨部分への再発が見つかった。
数カ月前から猛烈な痛みが続いてまともに眠れていなかった。
治療で痛みが無くなるのなら何でも受け入れる気になっていた。
最初の手術の時と違ったのは
少し成長した子供たちに癌のことや治療のことを詳しく説明できたこと。
「覚悟」をしなければいけないんだと思ったからだ。
再手術後、ストマを取り付けたことで障害者となり、
障害者として何ができるか模索し始めた。
補助化学治療を終えたころ、残念なことに再再発が見つかった。
「覚悟」していた筈なのに現実を直視することができなくて逃げ出したくなる時もあった。
検査を繰り返し、化学治療の再開を決断できないまま1年が過ぎた。
リハビリを続けストマとの付き合いにも慣れてきた2021年の夏にコロナに罹り、
治療のため、全身麻酔で人口呼吸器を付け10日間生死を彷徨った。
目が覚めた時、目の前に家族が見舞いに来ている幻覚を見た。
コロナと戦った身体は想像以上にボロボロになっていた。
一からリハビリを再開し、出来るようになることが徐々に増えてきたころ
幸運にも障害者スポーツに巡り合い、目標に向かって「挑戦」するきっかけができた。
2023年、2024年と連続でパラ国体に出場することができた。
大会新記録を出すこともできたが満足できる成績ではなかったが
皆が応援してくれていたことが本当に嬉しかった。
そのおかげでまた「挑戦」する気持ちが湧いてきた。
再再発した癌は確実に進行しているが、「挑戦」を続けてやろうと思う。
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「リリー・オンコロジー・オン・キャンバス」のテーマは「がんと生きる、わたしの物語。」
言葉だけでは伝えきれない“想い”をアート作品とエッセイで表現し、分かち合う“場”です。
https://www.lilly.com/jp/locj/
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