29/10/2025
当院で糖尿病治療を希望される患者様へ(2025年版)
3大栄養素のうち血糖を上げるのは炭水化物だけなので、糖尿病の原因は炭水化物であると考える人が多いですが、実は、炭水化物はインスリン感受性を改善することが多数の臨床試験で確認されています。血糖とインスリンの増加は糖尿病の徴候であって原因ではありません。
糖尿病の根本的な問題はミトコンドリアにおけるグルコースの酸化障害であり、インスリン注射でも解決することはできません。脂肪毒性と脂肪酸酸化の増加、それに伴うストレスホルモン(グルカゴン、アドレナリン、コルチゾールなど)の増加が深く関与していることは間違いなく、インスリン抵抗性はその結果なのです。インスリンは筋肉や脂肪におけるグルコースの取り込みを増やし血糖を下げる唯一のホルモンですが、ストレスホルモンに拮抗してカタボリック(異化)な効果をブロックする重要な役割も担っています。
流行りの低炭水化物食(糖質制限食)は血糖とインスリンを低下させますが、脂肪分解と脂肪酸酸化を増加させ、ランドル回路により生理的にグルコース酸化を減少させます。また、グルコースをエネルギー源とする臓器(脳、赤血球など)のために、ストレスホルモンの分泌が増加し、肝臓における糖産生(グリコーゲン分解と糖新生)を促進します。間欠的絶食、低カロリー食、低炭水化物食が飢餓状態疑似食と言われる所以で、ストレス代謝の継続は健康を害するリスクとなります。低炭水化物食でHbA1cや血糖は改善したけど、体重と共に筋肉量も減ってきた人は特に注意が必要です。
脂肪酸酸化はグルコース酸化と比べ、活性酸素を大量に産生し、エネルギー産生が非効率です。また、NADH/NAD+比の増加による還元状態はピルビン酸脱水素酵素、クエン酸回路の酵素、解糖系の酵素を抑制し、エネルギー代謝全体を抑制します。また、グルコース酸化と比較しCO2産生が少ないため、組織の酸素化が低下し、活性酸素、活性窒素、脂質過酸化物の不活化が低下します。さらに、甲状腺ホルモンを不活化し代謝を低下させます。
グルカゴンはインスリンと拮抗し、肝臓における糖産生、脂肪酸酸化、ケトン産生を促進します。タンパク質はグルカゴンの分泌を促進し、特に糖尿病では高血糖でもグルカゴンの分泌を促進します。低タンパク質食によるグルカゴンの分泌抑制はインスリン抵抗性を改善するので、2型糖尿病や慢性腎臓病では、タンパク質のカロリー比15%程度が最適と思われます。
しかし、極端なタンパク質制限(