一般社団法人信州上田みらい塾

一般社団法人信州上田みらい塾 宮坂昌之(大阪大学免疫学フロンティア研究センター・招へい教授、大阪大学名誉教授)が代表理事です。医学健康情報の発信を行います。

やっぱり私が言ってきたとおりじゃないですか!!以下、最新号の専門誌Lancetに載った論文からで、2000~2022年にイギリスで得られた電子データ(人口の約98%をカバーするデータ)に由来するものです。その結論は、1. 子どもを含む18歳...
06/11/2025

やっぱり私が言ってきたとおりじゃないですか!!

以下、最新号の専門誌Lancetに載った論文からで、2000~2022年にイギリスで得られた電子データ(人口の約98%をカバーするデータ)に由来するものです。

その結論は、
1. 子どもを含む18歳以下の若者では、新型コロナの初回感染から12ヵ月後までは(未診断あるいは診断前と比較して)、生命に危険をもたらすような血管疾患や炎症性疾患の発症リスクが明らかに高かった。たとえば、新型コロナ感染すると、血管疾患では、動脈血栓塞栓症で2.3倍、静脈血栓塞栓症で4.9倍、血小板減少症で3.6倍、心筋炎で3.5倍と高くなっていた。炎症性疾患に至っては14.8倍も発症リスクが高くなっていた。
2. 5歳~18歳までの年代では、新型コロナワクチン接種で心筋炎が発症するリスクは(未診断あるいは診断前と比較して)1.8倍と確かに高くなっていたが、このリスクは新型コロナ感染後のリスクよりも大幅に低くかった(逆に言うと、コロナ感染のほうがコロナワクチン接種よりも心筋炎になるリスクがずっと高かったということ)。
3. ワクチン接種後では心筋炎の過剰発症リスクは半分以下に低下していた。

どうですか?「子どもや若者はコロナにかかっても大したことない」と言ってきた方々、これが実際のデータですよ。新型コロナ感染により、子どもや若者では、普通はきわめて稀な血管疾患、炎症性疾患を起こしやすくなっていて、心筋炎の場合、ワクチン接種のリスクよりも感染によってかかるリスクのほうがずっと高かった、という結果です。

もうそろそろ、実際の疫学データを直視して、正しい判断をすべき時ではありませんか?
やはり、子どもたちや若者たちにとっても、新型コロナはかかったら損な病気です。

Children and young people have higher risks of rare vascular and inflammatory diseases up to 12 months after a first COVID-19 diagnosis and higher risk of rare myocarditis or pericarditis up to 4 weeks after a first BNT162b2 vaccine, although the risk following vaccination is substantially lower tha...

現在、免疫チェックポイント療法を含むがんに対する免疫療法が有効に使われていて、いくつかのがんでは明らかに患者さんの生存率が延びています。一方で、免疫療法があまり効かないタイプのがんもあります。いろいろ調べてみると、免疫チェックポイント療法が...
05/11/2025

現在、免疫チェックポイント療法を含むがんに対する免疫療法が有効に使われていて、いくつかのがんでは明らかに患者さんの生存率が延びています。一方で、免疫療法があまり効かないタイプのがんもあります。いろいろ調べてみると、免疫チェックポイント療法が効かないタイプのがんでは、がん組織の中に免疫細胞の入り込み(浸潤)が少なく、この状態だとがん免疫が始動しにくいようです(このタイプのものを「コールドながん」といいます)。一方、免疫チェックポイント療法が良く効くタイプのがんではがんの組織の中に免疫細胞がたくさん入り込んでいて(このタイプのものを「ホットながん」といいます)、この状態で免疫をうまく活性化してやると、免疫細胞ががん細胞を殺して、がんが縮小する(うまく行けばがんが消える)ようになります。つまり、コールドながんは免疫療法が効きにくく、ホットながんは免疫療法が効きやすい、ということになります。

既に、先日、私のFBポストで紹介しましたが、ステージⅣの肺がん患者や悪性黒色腫者に新型コロナワクチンを接種すると、生存率、生存期間が有意に改善することが報告されています(https://www.facebook.com/masayuki.miyasaka.9/posts/pfbid02sPMfWDyJb9qTQiC1i3eP27tGBy4vk9QoXGX8MKN2XyarAsjASp2ZaYvHSV2LNrPAl)。そのメカニズムとしては、新型コロナワクチン接種によってⅠ型インターフェロンなどのサイトカインが作られ、その結果、自然免疫、獲得免疫の両方が刺激されて、がん細胞に対するT細胞の攻撃が強まるのではないか、と考えられています。

今回、それと良く似た話がアメリカ科学アカデミー紀要(PNAS)に報告されています。この仕事では、がん細胞にⅠ型インターフェロンを人工的に作らせると、それによってがん免疫が刺激されて、がん細胞が殺されるようになる、という話です。以下、実験系がちょっと複雑なので、興味のある方のみお読みください。

一般に、細胞が傷ついたり、ウイルスが細胞内に侵入してきたりすると、細胞内でcGASというDNAセンサーが働いて、自然免疫が始動します。cGASは、サイクリックGMP-AMPという環状ジヌクレオチドを作る酵素(cGMP-AMP synthase)です。cGASが細胞内で刺激されて活性化されると、酵素反応の結果、cGAMP (cyclic GMP-AMP) が出来ます。cGAMPはSTINGというタンパク質(=自然免疫センサー)に結合してこれを活性化し、STINGはTBK1, IRF3などの分子を介してⅠ型インターフェロンの産生を誘導します。しかし、がん細胞では、なぜかSTING以下の経路がうまく動いていないことがあり、そのためにⅠ型インターフェロンが作られず、すると自然免疫がうまく動かないために「コールドながん」ができることになります。

そこで、アメリカの研究グループが、がん細胞にcGASを沢山作らせるように、cGAS mRNAを含む脂質ナノ粒子(LNP)を腫瘍内に投与しました(一種のmRNAワクチンです)。すると、がん細胞内でcGASが大量に作られるようになり、それが周囲の細胞に働いてⅠ型インターフェロンを作るようになり、これが免疫細胞に働いて自然免疫と獲得免疫の活性化をもたらし、コールドながんがホットながんに変わり、がんの成長が大きく抑えられていました。

以上の実験系は、すべてマウスで行われていて、現在、ヒトでも同様のことが見られるかどうか調べられています。もしこのような方法によって、免疫療法が効きにくいコールドながんを免疫療法が効くホットながんに変えることができるようであれば、臨床ステージが進んだ患者さんにおいても、より積極的にがん免疫療法を使うことができるようになるはずです。

少し長い話となりましたが、この例は、mRNAワクチンの手法をうまく利用してがん免疫を活性化しようとするものです。今後このような研究がさらに進んでいくと思われます。がん免疫は日進月歩の世界です。

『子どもは新型コロナ感染しても大したことがない』などと言う人たちが居ますが、実際の臨床例を見ると、とてもそんなことは一概には言えないことがわかります。以下は、中国で行われた多施設共同後ろ向きコホート研究の結果です。2022年12月1日から2...
04/11/2025

『子どもは新型コロナ感染しても大したことがない』などと言う人たちが居ますが、実際の臨床例を見ると、とてもそんなことは一概には言えないことがわかります。

以下は、中国で行われた多施設共同後ろ向きコホート研究の結果です。2022年12月1日から2023年1月31日までの2か月間(=オミクロン株流行時)に、山東省の5つの小児ICUに新型コロナ脳炎のために入室した102名(年齢中央値5.5歳)のうち、なんと約4分の1の子ども(26.5%)が入院中に死亡していて、約3割(34.7%)が退院時においても重度の神経学的後遺症が見られていました。さらにその後1年間の追跡調査を完了した生存者のうち、約3割(32.3%)が依然として重度の神経学的後遺症を抱えていました(https://www.pedneur.com/.../S0887-8994(25)00325-X/fulltext)。

日本でも新型コロナ感染で子どもが急性脳症になるときわめて予後不良であることが報告されていて、私がFB上ですでに紹介しています(
https://www.facebook.com/masayuki.miyasaka.9/posts/pfbid034GhbVr6RVcGaDFAMNQUm6JHs4AjfLgnUn9E6gRe7bNucFJ31tzrm8dTw7UBApx4al)。
また、アメリカのデータでも、1歳以下の子どもではたとえ脳症にかからなくても重症化しやすく予後が良くないことがわかっています(https://www.facebook.com/masayuki.miyasaka.9/posts/pfbid02Z1FK8YcJ1L6b7YAF1q7Uk2WYhmHq6axD5t4xJqR9nYE9AgQjiYGDQJuLaqCvhTPxl)。

このように、社会の中での新型コロナの流行が激しくなると、当然、子どもたちの間でも感染が増え、それとともに急性脳症を示す子どもたちが増えてきます。急性脳症を起こす頻度は大人も子どももあまり変わらず、いずれの場合にも予後不良です。

何かを発言する時には、実際の臨床データに基づいて話してほしいものです。

かねてから、私のFBポストでは、運動不足だとアルツハイマー病のリスクが高くなるという報告があることを指摘しています。https://www.facebook.com/masayuki.miyasaka.9/posts/pfbid0Avyhy...
04/11/2025

かねてから、私のFBポストでは、運動不足だとアルツハイマー病のリスクが高くなるという報告があることを指摘しています。
https://www.facebook.com/masayuki.miyasaka.9/posts/pfbid0AvyhytkWARXJrxrEs4xC4E5FxtM3Q227Hjzx9V8wRD1DtwHTExTpF3KcCPjA1BgUl
https://www.facebook.com/masayuki.miyasaka.9/posts/pfbid02jfp9LTRnHtYxekBXgYoopCyNZu5DkHak1SQGiGxqCP6iNwvSRRpaFwM9VFP2wFXql
またFB上で、アルツハイマー病のリスクを下げると思われる「脳洗い体操」の実際についてもお示ししています。
https://www.facebook.com/masayuki.miyasaka.9/posts/pfbid0oF6VNLpBmVPfT2gfqdubXG1jMvQ3zsDo6hbK22dy9AzgavTVKrYLqStriKTHMUKFl

これまでの報告では、運動不足により脳内にアミロイドβが蓄積する傾向があり、これがアルツハイマー病のリスクを高める、とされてきました。

ところが、最新号のNature Medicineでは、アメリカの研究グループが、アミロイドβよりはタウというタンパク質の蓄積のほうが問題であり、1日3千歩以上の歩行によりタウの蓄積とそれに伴う認知機能低下をかなり防げる、という報告をしています(https://www.nature.com/articles/s41591-025-03955-6)。脳内のアミロイドβやタウの量はPETで測定しています。

この研究では、歩数計で測定した歩数を用いてアミロイドβのベースラインが高かった人について調査をしていて、身体活動を積極的に行うと(=毎日一定歩数以上歩くと)認知機能の低下が遅くなることを示しています。ただし、注目すべきはアミロイドβの量ではなく、タウのほうだということです。すなわち、身体活動を増やすと、下側頭葉におけるタウの蓄積が遅くなり、これに伴い認知機能低下が遅くなることがわかりました。特に、タウ蓄積の遅延と認知機能低下の関連は、1日3,000~5,000歩の歩行ではっきりと見られ、その効果は中等度の身体活動レベル(1日5,001~7,500歩)でプラトーに達するとのことです。

この程度の運動量ならば、多くの高齢者ではなんとか可能ですね。まずはやってみましょう。

ウイルスなどに対して体内で作られる抗体は、L鎖2本、H鎖2本、計4本のポリペプチド鎖からなることから、分子量が大きく、工業的に大量生産をすることが容易ではありません。一方、アルパカやリャマなどのラクダ科の動物では、生まれつきH鎖だけからなる...
04/11/2025

ウイルスなどに対して体内で作られる抗体は、L鎖2本、H鎖2本、計4本のポリペプチド鎖からなることから、分子量が大きく、工業的に大量生産をすることが容易ではありません。一方、アルパカやリャマなどのラクダ科の動物では、生まれつきH鎖だけからなる特殊な抗体をもっています。分子量が小さく、さらにその抗原結合領域だけにしたものはナノボディ(=小さな抗体)と呼ばれ、このようなものだと大腸菌や酵母を利用して大量生産をすることができます。
10月29日号のサイエンスのNews欄に、このナノボディを利用した抗蛇毒素作りの試みが紹介されています。
それによると、毎年、世界では10万人以上が毒蛇に咬まれて亡くなっているそうです。これに対して、馬や羊を毒素で免疫することにより抗毒素が作られているのですが、どこの診療所でも用意しているわけではなく、また特定の蛇には特定の抗毒素が必要なこともあり、必要な抗毒素がすぐには手に入らない可能性があります。
そこで、デンマークの研究グループが18種類のアフリカヘビから集めた毒素の混合物をリャマとアルパカに注射して、これらの毒素に対するナノボディ作りを試みました。できた抗体(=抗原結合領域)のDNA配列を大腸菌を導入して試験管内でナノボディを大量生産しました。そしてマウスを用いて、13種のコブラ、4種のマンバなど計18種類の蛇毒素に対する中和活性を調べました。具体的には、マウスに特定の蛇毒素を注射してから5分後にナノボディ混合液を投与するという方法です。その結果、ナノボディ混合液には11種中8種の蛇毒素に対して防御効果が認められ、既存の抗毒素よりも優れた中和効果があった、とのことです。
現在のところ、今よりさらに中和効果の高いナノボディ作りが進みつつあり、またヒトでの臨床試験に向けて研究開発が進行中です。これがうまくいくと、新しい治療法としてゲームチェンジャーとなる可能性があります。

Synthetic cocktail of llama and alpaca “nanobodies” protected mice from venoms of 17 snakes

世の中では、抗生物質の乱用による耐性菌の出現が大きな問題となっています。私のFBポストでも以前にこれについて取り上げています。https://www.facebook.com/masayuki.miyasaka.9/posts/pfbid0...
04/11/2025

世の中では、抗生物質の乱用による耐性菌の出現が大きな問題となっています。私のFBポストでも以前にこれについて取り上げています。
https://www.facebook.com/masayuki.miyasaka.9/posts/pfbid0XEbEmG4JmZ7xmuWU1NBFqGCFbhcxEdnZ2Zn8GhibQdmMJXPx55dSWoSRseYXZSfrl

このような状況に対して、より強力で耐性菌を作りにくい抗生物質の探索が今も継続的に行われています。10月31日号のNatureのNews欄によると、イギリスの研究グループが土壌の中の放線菌からプレメチレノマイシンCラクトンと呼ばれる新しい抗生物質の同定に成功した、とのことです。この物質は約60年前に発見された抗生物質メチレノマイシンAの中間体化合物で、驚いたことに、最終産物(=メチレノマイシンA)に比べて約100倍強力で、微量の投与でこれまで治療困難とされていた細菌株を死滅させる能力がありました。

これまでは、「進化によって最終産物ができるので抗生物質の場合においても最終産物に一番高い効果があるはず」と考えられていましたが、今回の場合、最終産物よりも抗菌活性の高い中間体化合物が見つかったのです。

これは偶然の発見だったようです。既に放線菌の一種であるストレプトミセス・セリカラ(Streptomyces coelicolor)がメチレノマイシンAを作ることがわかっていました。これに対して、イギリスのある研究者がその生成経路を明らかにしようと分子生成に関連する酵素をコードする遺伝子を一つずつ欠失させる実験を行ったところ、メチレノマイシンAを生成する過程で生成されるいくつかの中間体分子が特定できたのです。

その抗菌活性を調べたところ、プレメチレノマイシンCラクトンを含む2つの分子が、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)や、致命的な血流感染症および尿路感染症を引き起こすエンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)など7種の細菌株に対して、なんとメチレノマイシンAよりもはるかに強力な抗菌効果を持つことが明らかになりました。たとえば、薬剤耐性黄色ブドウ球菌株を殺菌するために必要なメチレノマイシンAの最小濃度は1mlあたり256マイクログラムでしたが、プレメチレノマイシンCラクトンの最小濃度は1mlあたりわずか1マイクログラムだったのです。また、この化合物は、2種のエンテロコッカス・フェシウム株による感染症の治療によく使用される抗生物質バンコマイシンよりもはるかに少ない用量で殺菌できました。また、エンテロコッカス・フェシウム株はこの抗生物質に対して容易には耐性を獲得しないことが確認されました。

まさに「瓢箪から駒が出た」という感じの発見です。今後はいかにしてこの物質を安価で迅速に作ることができるかが一つの焦点となります。また、細胞毒性がどの程度なのか、もしあればそれを避けるためにはどうしたらいいのか、という点も大事な点です。薬の開発も、日進月歩の世界です。

https://www.nature.com/articles/d41586-025-03595-3

Surprise discovery could pave the way for new treatments against drug-resistant infections.

04/11/2025

認知症予防対策としてのブレインウォッシング(脳洗い)体操
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認知症予防対策としてのブレインウォッシング(脳洗い)体操
川崎 貴久
明日から毎日やります!

腹部肥満はやはり気にしたほうが良さそうです。JAMA Network Openに掲載された論文によると、正常BMIの成人の5人に1人以上が腹部肥満であり、腹部肥満があると種々の心血管代謝リスクがある、とのことです。この研究では、2000年~...
01/11/2025

腹部肥満はやはり気にしたほうが良さそうです。JAMA Network Openに掲載された論文によると、正常BMIの成人の5人に1人以上が腹部肥満であり、腹部肥満があると種々の心血管代謝リスクがある、とのことです。

この研究では、2000年~2020年の期間に、世界保健機関(WHO)が91カ国から得たデータ(15歳~69歳までの47万人以上の参加者)について分析しています。腹部肥満の定義は、女性でウエスト周囲径が80cm以上、男性で94cm以上です。

この定義に従うと、腹部肥満を持つ人の割合は、全体で約半分(45%)であり、正常BMIの人でも22%が腹部肥満でした。そして、腹部肥満があった場合、正常BMIであっても、高血圧、糖尿病、総コレステロール値およびトリグリセリド値が高い傾向がありました。

以上、健康寿命延伸のためには、われわれはBMIだけではなくてウエスト周囲径も気にすべきである、ということになります。

This cross-sectional study investigates the global prevalence of abdominal obesity with a normal body mass index (BMI) and its association with cardiometabolic outcomes among individuals aged 15 to 69 years.

New York Timesが以下のように報じています。『インフルエンザ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)、帯状疱疹など、多くのウイルス感染症が心臓病や脳卒中のリスク増加と関連していることが、新たな研究で確認された。この研究(h...
31/10/2025

New York Timesが以下のように報じています。
『インフルエンザ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)、帯状疱疹など、多くのウイルス感染症が心臓病や脳卒中のリスク増加と関連していることが、新たな研究で確認された。この研究(https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/JAHA.125.042670)によると、心臓発作のリスクは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染後数週間で3倍、インフルエンザ感染後1ヶ月で4倍に増加するという。この研究は、これまでに出た150以上の関連論文を総合的に分析したメタ解析によるものである』。
中略
『ウイルスはどのように心臓に悪影響を及ぼすのだろうか?専門家によると、これらの感染症が心臓障害を引き起こすメカニズムは多様であるようだ。細菌性感染症を含む急性感染症は、発熱や心拍数の増加を引き起こし、心臓に負担をかける。ベイラー医科大学のダニエル・M・マッシャー博士は、心筋が酸素不足に陥り、心臓発作を引き起こす可能性があると述べているが、彼によると、「長期的には、結局のところ、すべては慢性炎症に帰結する」とのことだ』。

『過去5年間にわたる新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する集中的な研究の結果、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が心臓と肺の血管の内皮細胞、つまり内壁に直接損傷を与えることが明らかになった。これにより、局所的な炎症が起きて、血栓の形成につながる可能性がある。血栓が大きく成長したり剥がれたりすると、心臓や脳に血液を供給する血管を塞ぎ、心臓発作や脳卒中を引き起こす可能性がある。また、これらの血栓は肺に移動して血管を塞ぐこともあり、肺塞栓症を起こす、とマッシャー博士は述べている』。
中略
『では、どうしたらいいのか?多くの医師たちが言うのは、最善の方法はそもそも感染を予防することである。インフルエンザ、新型コロナウイルス感染症、帯状疱疹など、多くのウイルスに対してはワクチンが利用可能である。また、ワクチンは感染した場合の重症度を軽減するのにも役立ち、ひいては心臓合併症や脳卒中のリスクを低減する可能性がある』。

いいですか?『風邪など怖くない、ワクチンやマスクは不要』などと言っていると、とんでもないことが起きる可能性がありますよ。必要な時には必要な対策をしましょう。

プラスマサイトイド樹状細胞は自然免疫系に属する細胞で、Ⅰ型インターフェロンを作り、活性化とともにNK細胞、T細胞、B細胞などに働いて、これによってウイルスに対する防御機構が動き出す、とされています。細胞表面から樹枝状の突起が出ていることから...
31/10/2025

プラスマサイトイド樹状細胞は自然免疫系に属する細胞で、Ⅰ型インターフェロンを作り、活性化とともにNK細胞、T細胞、B細胞などに働いて、これによってウイルスに対する防御機構が動き出す、とされています。細胞表面から樹枝状の突起が出ていることから樹状細胞という名前がついているのですが、典型的な樹状細胞とは異なり、抗原提示能力がほとんどなく、また、血流からリンパ組織に入り、リンパ管を介してまた血流に戻るというリンパ球のような動態を示すことから、樹状細胞というよりは自然リンパ球(自然免疫に関与するリンパ球)の一種ではないかともいわれています。

一部の教科書や企業のパンフレットには「プラスマサイトイド樹状細胞は、ウイルス感染時に免疫の司令塔として働く」と書かれていて、この細胞の機能を強化するというお墨付きの乳酸菌飲料まで市販されています。しかし、これまでに得られたプラスマサイトイド樹状細胞に関するデータは、主にマウスの実験から得られたデータであって、ヒトに関するデータは少ないのが実情です。また、この細胞が欠損したマウスが作られているのですが、他の細胞まで同時に欠損している可能性があり、このようなマウスから得られた結果が、プラスマサイトイド樹状細胞欠損の結果を見ているのか、それとも他の細胞を同時に欠損していたための結果を見ているのか、よくわからないところがありました。

そこで、フランスの研究グループが、プラスマサイトイド樹状細胞においてのみ誘導的に毒素を作れるようなマウスを実験的に作って、この細胞の機能を調べました(このマウスではプラスマサイトイド樹状細胞のみを随時欠損させることができる)。すると、驚いたことに、プラスマサイトイド樹状細胞欠損マウスは、正常マウスよりも血中のⅠ型インターフェロン濃度がずっと低いにも関わらず、サイトメガロウイルスやインフルエンザウイルスに対して抵抗性が高く(=感染しても正常マウスよりも死亡率が低く)、これらのウイルスには、プラスマサイトイド樹状細胞が不要であるだけでなく、むしろ無いほうが、抵抗性が高くなる可能性が示唆されました。

そこで、彼らはⅠ型インターフェロンだけを選択的に作れないプラスマサイトイド樹状細胞を人工的に作り、この細胞をプラスマサイトイド樹状細胞欠損マウスに戻したところ、インフルエンザウイルスに対する抵抗性は変わらず、むしろある条件下ではⅠ型インターフェロンが無いほうがウイルスに対する抵抗性が高まることが確認されました。

以上、まだ限られた種類のウイルスに対してしか実験が行われていませんが、これまでの結果では、サイトメガロウイルスやインフルエンザウイルスに対しては、プラスマサイトイド樹状細胞以外の細胞が防御の主役となっている可能性が考えられます。また、Ⅰ型インターフェロンは常にウイルスに対して防御的であるとは限らず、プラスマサイトイド樹状細胞によってⅠ型インターフェロンが作られ過ぎると、かえってウイルス抵抗性が下がるのかもしれません(Ⅰ型インターフェロンは適量が良いが、多すぎるとまずい?)。

やや長たらしい話でしたが、免疫学の分野には、まだまだわからないことがたくさんあります。ただただ免疫力をアップすればいいのではありません。むしろ、アクセルとブレーキがバランス良く働くことのほうが大事のようです。

Because they are a main source of the antiviral cytokines type I and III interferons, plasmacytoid dendritic cells are considered to be essential for host defense against viral infections. Contrary to this dogma, we show that they are dispensable or even detrimental in mice.

年間200万件以上の報告がある腸チフスの原因菌として、サルモネラ・エンテリカ血清型パラチフスA(S. Paratyphi A)が知られていますが、この細菌に対する有効なワクチンはこれまでありませんでした。最近、この細菌に対して弱毒化ワクチン...
30/10/2025

年間200万件以上の報告がある腸チフスの原因菌として、サルモネラ・エンテリカ血清型パラチフスA(S. Paratyphi A)が知られていますが、この細菌に対する有効なワクチンはこれまでありませんでした。

最近、この細菌に対して弱毒化ワクチン(CVD 1902)が開発され、その効果がいわゆるhuman challengeという方法で確認されました。この方法では、健康な成人72名(20-54歳、中央値32歳、46%女性)を1:1の割合で割り付け、14日間隔でCVD 1902またはプラセボの2回接種(経口投与)が行われました。そして、二重盲検ランダム化プラセボ対照試験の形でCVD 1902の効果について、評価が行われました。具体的には、2回目の接種から28日後に、参加者全員にS. Paratyphi Aが経口投与され、それから14日以内にS. Paratyphi A感染の有無とワクチンの安全性と免疫原性について調査が行われました。New England Journal of Medicineに論文が発表されました。

その結果、CVD 1902投与では重篤な有害事象は認められず、一方、S.パラチフスAのO抗原に対して有意なIgGおよびIgA反応が誘導されていました。細菌のチャレンジ実験では、CVD 1902群の21%、プラセボ群の75%がS. Paratyphi A曝露後14日以内にS.パラチフスA感染症と診断され、ワクチンの有効性は73%でした。これらの結果から、CVD 1902の2回接種をすると、安全性の懸念なくS.パラチフスA感染症に対する防御がもたらされることがわかりました。human challenge実験には議論があるところですが、安全性に十分に注意して行えば、それなりの結果(この実験でしかわからないような結果)をもたらすことがわかります。

Salmonella enterica serovar Paratyphi A (also known as S. Paratyphi A) is responsible for more than 2 million cases of enteric fever annually. There are no licensed vaccines against S. Paratyphi A....

子どもは大人に比べて新型コロナにかかりにくく、かかっても症状が軽いことがわかっています。子どもたちを調べてみると、普段からⅠ型インターフェロン遺伝子やインターフェロン誘導遺伝子群の発現がやや高くなっていて、これは子どもたちがしばしば種々の病...
30/10/2025

子どもは大人に比べて新型コロナにかかりにくく、かかっても症状が軽いことがわかっています。子どもたちを調べてみると、普段からⅠ型インターフェロン遺伝子やインターフェロン誘導遺伝子群の発現がやや高くなっていて、これは子どもたちがしばしば種々の病原体にさらされていて時には感染を起こしている(あるいはその経験を持つ)ためではないかと考えられています。

これに関連して、アメリカの研究グループが、では、どのようなウイルス感染が実際に子どもたちに起きていて、それが新型コロナにかかりにくい原因となっているのか、について調査し、その結果を感染症専門誌Journal of Infectious Diseasesに載せています。

この調査ではアメリカで1,156人に対して、2020年5月から2021年2月の期間、健康状態にかかわらず、週に2回、定期的に鼻腔スワブ検体を採取し(鼻腔にスワブを挿入して検体を採取し)、18のウイルスに関してPCR検査を用いて感染の有無を調べ、さらに抗ウイルス防御に関する遺伝子発現について調べました。

その結果、86.5%の人がヒトライノウイルス陽性になっていましたが、多くが子どもで、そのほとんどが自覚症状のない無症候性感染によるものであることがわかりました(偽陽性でないことを確認するために陽性サンプルから検体の塩基配列を調べ、本当にヒトライノウイルス感染であったことを確認しています)。またこれ以外のウイルスはきわめて低頻度でしか検出されませんでした(つまり、子どもでもっとも多いのがライノウイルス感染であるということが確認されました)。

そして、ある時点でライノウイルス陽性になった人では、その後30日間を調べると、ライノウイルス陰性だった人に比べて、新型コロナウイルス感染を起こす頻度は約半分(48%減)に減っていて、さらに、コロナウイルスの保有量はライノウイルス陰性者に比べて約10分の1と少なくなっていました。つまり、あらかじめライノウイルス感染を起こした人では新型コロナにかかりにくくなっていて、万が一かかっても保有ウイルスが少なくて済んでいた、ということです。

さらに、ライノウイルス陽性者を調べてみると、陰性だった時点に比べて、57遺伝子の発現が高くなっていて、そのうち24遺伝子はウイルス防御にかかわるものであり、そのほとんどはライノウイルス感染で発現が強まる遺伝子でした。また、子どもたちの感染経歴を調べると、子どもたちは、大人たちに比べて約2.2倍、ライノウイルス感染を起こしやすいことがわかりました。

以上のことを、これまでわかっていたことと併せて、分子レベル、遺伝子レベルで説明すると、次のようになります。(1)子どもは大人に比べてヒトライノウイルスに感染しやすく、ライノウイルス感染をすると、抗ウイルス性サイトカインであるⅠ型インターフェロンが作られるようになる、(2)出来たⅠ型インターフェロンが周囲の細胞の受容体に結合して細胞内にシグナルが入り、インターフェロン誘導遺伝子群の発現が誘導される、(3)発現が強くなったインターフェロン誘導遺伝子群から種々の抗ウイルス性タンパク質が作られて、子どもたちの細胞が抗ウイルス状態となり、新型コロナウイルスに対しても効果を発揮する、ということです。

つまり、簡単に言うと、子どもたちでは自然免疫が普段からライノウイルス感染によって少し活性化されていて、そのために新型コロナにかかりにくくなっている、ということが考えられます。

もちろん、このようなことはどこの国、地域で調べるか、その土地でどのようなウイルスが流行しているか、ということにも影響されるので、一概にこれが正しいとは言えません。それでも、上記のデータがアメリカで横断的に調べられたものであり、10カ月以上にわたって千人以上から週2回定期的に鼻腔スワブ検体を採取して得たデータであることを考えると、ライノウイルスによる感染によって活性化された自然免疫が新型コロナウイルス感染を起こしにくくしているということがかなり確実性の高いことであると考えられます。

最後、蛇足になりますが、上記の調査ではウイルス感染の有無をPCR検査によって調べていて、一方、反ウイルス派は『PCRはウイルス感染の有無を言うには不適だ』、『PCRを発明したキャリー・マリスはPCRをウイルス診断に使うべきではないと言っていた』と繰り返すのですが、それは間違っています。マリス博士が言ったのは『PCRは鋭敏なので、指標にするCt値(増幅回数)を誤ると偽陽性が多くなる』ということであり、言い換えると『PCRは強力なツールであるがゆえに、その限界と結果の解釈を誤ると危険だ。しっかりと対照群を設定するなどして、注意して用いないといけない』ということを言っていたのです。ちなみに上記の調査では、私が見る限り、このあたりはしっかりと確認されていて、心配なところはないようです。

Rhinovirus infections induce airway expression of an innate immune gene profile that is associated with reduced risk of SARS-CoV-2 infection.

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