25/09/2025
こんにちは、専攻医2年目の伊達裕美子です。8月9日に「学生・研修医のための家庭医療学夏期セミナー」にて、講師として「亀田式!患者中心の医療の方法」というセッションを担当しました。
「患者中心の医療」と聞くと「患者さんを大事にするなんて当然では?」と感じるかもしれません。しかし実際の臨床現場では、必ずしも“当たり前”にできているわけではありません。たとえば、薬の変更を提案しても患者さんが納得してくれない、話が長くて主訴が見えてこない──そんな経験は誰しもあるのではないでしょうか。その結果、患者さんに最善の医療を届けることが難しくなるだけでなく、医療者自身がストレスを抱えることにもつながります。
こうした場面で役立つのが「患者中心の医療の方法(PCCM: Patient-Centered Clinical Method)」です。PCCMは体系立った理論として確立されたアプローチです。複数の研究からも、PCCMを実践することで患者さんに提供する医療の質が向上し、同時に医療者にとっても診療がより充実したものになるというメリットが示されています。
今回のセッションでは、まずレクチャーで基本的な枠組みを学び、その後に実際の症例を用いたグループワークを行いました。参加してくださったのは全国から集まった医学生や初期研修医の皆さん。低学年の学生さんも多くいましたが、ロールプレイに積極的に取り組み、活発に質問をしてくれる姿が印象的でした。
短い時間の中でも、「もっと話したい」「もう少し続けたい」という雰囲気が生まれ、終了後には「今後の実習や診療に活かせそう」という感想を多くいただきました。質問の時間も盛り上がり、講師側にとっても新しい気づきがありました。
講師陣は家庭医専攻医1〜2年目で、学生や研修医の皆さんと年次が近いからこそ、リアルに感じる壁や悩みに共感できました。この一年間、輪読会を通じて学んできた内容を、自分たちなりに消化して届けることができたのは、大きな挑戦であり、また貴重な機会でした。参加者の皆さんが熱心に耳を傾け、笑顔でグループワークに取り組む姿に、こちらもエネルギーをいただきました。
家庭医療の魅力は、病気そのものだけではなく「患者さんという一人の人を、生活や家族、地域といった文脈の中で理解すること」にあります。患者中心の医療の方法を学ぶことは、家庭医を目指す人だけでなく、あらゆる診療科に進む人にとっても有用です。医療を提供する側・受ける側の双方にメリットがあるこのアプローチを、一人でも多くの学生・研修医の皆さんに体験していただきたいと強く感じました。
今回の夏セミで得られた学びと参加者からの熱意を励みに、今後も「患者中心の医療」を広め、実践し続けていきたいと思います。