19/03/2026
新型コ○ナウイルスの世界的パンデミックにおいて数千万人の命を救った小さな機械は、かつて母国の医師たちから「素人のオモチャ」と鼻で笑われ、長年埃をかぶっていました。
1970年代、医療機器メーカーである日本光電の一企業研究者だった青柳卓雄氏は、指先に光を当てるだけで血液中の酸素濃度が測れる画期的な装置「パルスオキシメーター」を発明しました。
青柳氏はこの機械を握りしめ、実用化に向けて病院へと売り込みに向かいます。しかし、当時の日本の医師たちは、自らの経験と臨床の腕に絶対の自信を持っていました。
「患者の唇や顔色(チアノーゼ)を見れば、酸素が足りないことくらいすぐに分かる。企業の一技術者が作った機械の数値などに頼る必要はない」
医師たちは青柳氏の言葉に耳を貸そうとせず、その画期的な発明はまともに取り合ってもらえませんでした。日本の医療現場では全く普及せず、長らく日の目を見ない不遇の時代が続きます。
しかし数年後、海を越えたアメリカで事態は急転します。
この技術の存在を知ったアメリカの麻酔科医たちが、「これは麻酔中の事故を未然に防ぐ、まさに神の機械だ!」と驚愕したのです。全身麻酔中の患者のわずかな変化をリアルタイムで知らせてくれるこの装置は、アメリカの医療現場で瞬く間に普及し、やがて日本に逆輸入される形で、かつて青柳氏を冷笑した母国の医療現場をも席巻することになりました。
現在、パルスオキシメーターは世界の医療機関に必ず備え付けられる絶対的なグローバルスタンダードとなっています。
権威ある医師たちから鼻で笑われ、まともに相手にされなかった一介のエンジニアの発明。それは、未知のウイルスが世界を襲った際にも重症化のサインをいち早く知らせる命の防波堤となり、世界中で数え切れないほどの人々を救い続けているのです。