12/08/2018
森林セラピーと先進国 『病院ではない病院』
欧米諸国では、水や植物による自然療法が大変盛んに行われています。森林セラピーはその一つの要素として位置づけられています。各地の森林には保養のための施設があり、行政や研究機関による協力体制も整えられています。また、保険適用が可能であるなどの法的な支援もあることで、より人々が森林セラピーに親しみやすい環境となっています。
特に有名なのはドイツの「クナイプ療法」
ドイツにはセバスチャン・クナイプによって提唱された「クナイプ療法」という自然療法があり、その重要な柱として、森林セラピーが早くから行われています。これは世界の森林セラピー先進事例の中でも特に有名です。ドイツ国内には64ヵ所の保養地があり、これらにクナイプ医師連盟が調査・設計を行った森林散策コースがあります。また、保養地にある保養宿泊施設のすべてには、医師が往診・常勤できる仕組みとなっています。
クナイプ療法の画期的な点は、社会健康保険が適用されるというところにあります。また、ドイツでは4年に一度3週間の保養を行うことが法的に認められているので、これを利用してクナイプ療法を行う人も多くいます。さらに、病気予防を目的とした利用に対しても、時期を問わずいつでも自然療法を受けられるなどの柔軟な制度により、クナイプ療法は広く普及しているのです。
なかでも、クナイプ療法の発祥の地バート・ウェーリスホーフェンには、毎年100万人近い人が訪れています。この地の行政機関と民間の医療団体の間にはしっかりとした協力体制が取られており、これも、この地の自然療法が盛んな理由の一つだと考えられます。
欧米では盛んな森林セラピー海外事情
緑豊かな欧米の地域において、各国の自然療法に対する取り組みはさまざまです。フランスではオーヴェルニュ地方の自然療法として森林ガイド付き森林浴が行われています。「トロンセの森」などが有名です。スイスでは、「ビタパルコース」と呼ばれる健康増進のためのエクササイズコースが国内に約500ヵ所もあり、賑わっています。イギリスでも心臓病予防のための「健康トレイル」があります。
これも行政の援助によって整備されてた理想的な森林セラピーコースです。
医療的保養の一つに森林セラピーが取り入れられているというスタイルは、これら欧州諸国の国々に見られる特徴です。いずれの国でも、もともとの自然環境を有効に利用した保養施設が整えられ、より自然に近い効果的な保養コースとなっています。
森の中へと入っていくと爽やかな空気の中、気のせいか、頭がすっきりするような感覚になりませんか? 森には木や草が、菌などを抑制するはたらきを持つといわれている物質「フィトンチッド」などのリフレッシュ効果のあるさまざまな物質を放出しています。
目には見えない物質ですが、木々の間に漂うこれらの作用によって、体がすっきりと癒されていくのです。
広いの森の中では体を動かすことも自由です。森林内のウォーキングはもちろん、歩くための準備体操から、森に入っての深呼吸、ストレッチングなど思い切り体を伸ばしましょう。澄んだ空気の中で体を動かすことで、全身の血行が促進され、肉体や精神の緊張を解きほぐすことにつながります。木々の緑の中で横になって体の力を抜き、森の息吹を全身で吸収することも、大変効果的なリラックス方法です。
森の中を歩けば、目に飛び込んでくるのは緑の木々や草花。小さな花も大きな木も、それぞれがただそこにあるだけではなく、独特の色や形状、名前を持っているのです。小さな植物に目を留めて観察をしたり名前を覚えたり、においをかぐことで気づいたことはきっと心に安らぎを与えてくれるはずです。 日中たくさんの森の力を浴びたら、夜はゆっくり休むことが効果的です。大きなお風呂で足を伸ばしたり、おいしい土地の野菜を食べたり、ぬくもりのある快適な床でぐっすり眠ることで、森林セラピーの総仕上げとなります。
まさに病院ではない病院として、事実海外では保険適用もされており、それらの国々では100年以上も歴史が続いている場所もあります。