13/11/2025
診察した男の子の服に素敵なワッペンが貼ってあったので写真を撮らせてもらいました。
Standard style is the best.
とてもいい言葉です。
私が日々の診療の中で大切にしているものが「標準医療」です。
「標準医療」の「標準」とは上・中・下の中という意味ではありません。正しく更新された医学的な知識に基づく、最も信頼できるという意味です。
新しく発表される論文などを集めて、多くの専門家の議論を経て出来上がる「ガイドライン」等を根拠にして、いろんな疾患に対する最も良い治療法が「標準医療」です。「標準医療」は最も効果的というだけではありません。危険性や無駄が最も少ないということも重要です。
効果的で安全な医療が「標準医療」です。
病気を治療するうえで医療者側だけでなく患者側にとっても「最適解」です。
残念ですがすべての医師が「標準医療」を実践しているわけではないようです。自分の経験に基づくだけで久しく知識をアップデートしていない診療を目にすることがあります。
例えば「アスベリン」という薬があります。咳止めとして処方されることがありますが、こどもの咳を鎮める効果について証明されている研究結果はありません。効果の判定もなく、ただ昔から処方されている薬です。古い時期にこの薬の処方を習ってから知識を更新していないと処方してしまいます。幸い、恐ろしい副作用はほとんど無いのですが、効果もありません。無駄です。
処方医が惰性で診療を行っているか、適切に知識をアップデートしているかを知る手がかりとはなりますが、そのために不要な薬をこどもが飲んでいるかと思うと気の毒ですね。
ほかにも「咳止めのテープ」とか風邪をひいたときの「抗ヒスタミン薬」とかいろいろあります。また、「喘息の’け’」「喘息予備軍」などと説明して喘息の標準的な管理からかけ離れた治療を行っているところもよく見かけます。
「標準医療」は手間がかかりますが、日々の診療に自身を与えてくれます。そして診察相手のお子さんに効果的で安全な治療を行うことができます。
ただ外見上は目覚ましい効果が見られないこともあります、よくあります。これが「標準医療」のもどかしいところです。