明泉堂こうの治療院

明泉堂こうの治療院 栃木県小山市にある「日本古典的鍼灸」「中医学的鍼灸」「現代医学的鍼?

21/04/2026

「力」が神経を動かす ― 鍼刺激と記憶の新しい理解

神経の情報伝達というと、電気や化学を思い浮かべる方が多いと思います。
しかし近年、「力」そのものが情報の媒体として働いていることが分かってきました。

最近の研究では、記憶の形成という脳の働きにも、この力学的な作用が関与している可能性が示されています。

長期記憶の形成では、シナプスにある樹状突起スパインの形が変化します。
さらに、このスパインが物理的な力でシナプス前部に作用し、神経伝達物質の放出を増やす現象が確認されています。

これは圧感覚と呼ばれ、従来の電気的・化学的な伝達に加えて、「力学的伝達」という新しい視点を示すものです。

この観点から見ると、鍼や円皮鍼は、皮膚へのごく微細な圧刺激を通して神経や脳に働きかけていると考えられます。
単なる刺激ではなく、記憶にまで影響しうる情報として作用している可能性があるということです。

また、皮膚への圧によって発汗が変化する反射も知られています。
ある部位では発汗が抑えられ、別の部位では促進されるというこの反応は、皮膚刺激が自律神経に影響していることを示しています。

さらに、細胞自体も機械的な刺激を感知しています。
押す、引く、曲げるといった力が加わることで、細胞は形態や分裂、再生といった反応を起こします。

つまり、皮膚に加えられたわずかな力は、神経、細胞、そして脳へと連続的に伝わっていくのです。

鍼刺激を局所の刺激としてではなく、力覚を介した生体調整として捉えること。
この視点が、これからの臨床と理論をつなぐ重要な鍵になると考えられます。

English Summary

Recent neuroscience has revealed that mechanical force, in addition to electrical and chemical signaling, plays a key role in neural communication. Studies suggest that during memory formation, dendritic spines exert physical force on synapses, increasing neurotransmitter release through mechanosensation. This introduces mechanical signaling as a third mode of information transmission. From this perspective, acupuncture can be understood as a method that influences the nervous system and brain through subtle mechanical stimulation of the skin. Skin pressure also affects autonomic responses such as sweating, and even cells respond to mechanical forces by altering their behavior. Thus, mechanical force acts as a continuous link connecting the skin, cells, nervous system, and brain.

NAIRM方式・神経反射治療手順解説編
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Practical Guide to NAIRM Neuro-Reflex Regulation Therapy
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21/04/2026

その不調、水の流れが原因かもしれません

冷房が効き始めるこの時期、足元の冷えを感じる方が増えてきます。
足が冷えると血流が低下し、その影響は全身の流れに及びます。
最近よく聞かれるのが、耳が詰まる感じや動悸、むくみ、ふらつきといった症状です。
一見すると、それぞれ別の問題のように見えますが、東洋医学の視点では、これらは「からだの中の水の流れ」に関わる一連の変化として捉えられます。
この水の流れが滞ると、さまざまな形で不調が現れます。
逆に言えば、この流れが整うと、複数の症状が同時に軽減していくことも少なくありません。
ただし、こうした症状の中には、重大な疾患が隠れている可能性もあります。
必要な検査を受けることは大切であり、そのうえで異常が見つからない場合には、別の視点からのアプローチが重要になります。
現代医学と鍼灸は対立するものではなく、それぞれの特性を活かして補い合う関係にあります。
血流を改善するという点においては、共通した目的を持っています。
血流は、薬を運び、修復に必要な物質を届ける役割を担っています。
鍼灸は、体の凝りを取り除くことで、この流れを整える専門的な方法といえます。
また、水の流れに関係する症状として見逃せないのが咳です。
東洋医学では、肺は呼吸だけでなく、体の上に集まった水を下に戻す働きを担うと考えられています。
この働きが低下すると、水がうまく下がらず、口から排出される形になります。
これが咳として現れるという捉え方です。
こうして見ると、水の流れは血流と同様に重要な要素であることが分かります。
体内に余分な水を溜めないことが、症状の予防や改善につながります。
日常生活で気をつけたいのは、冷たい飲み物の取り方です。
特に冷えたお茶やコーヒーを習慣的に飲むことは、水の滞りを助長する要因になる場合があります。
もちろん、体質によって影響の出方は異なります。
すべての人に同じ方法が合うわけではありませんが、何か症状を感じている場合には、一度見直してみる価値はあります。
無理に我慢するのではなく、自分の体に合った方法を見つけていくことが大切です。
参考までに、黒豆を煮て、その煮汁と一緒に摂る方法もあります。
利尿の働きにより、水の流れを助け、症状の軽減が期待できます。
身近なところから整えていくことで、体の変化は確実に現れてきます。

English Summary
During colder seasons with increased air conditioning, reduced circulation in the feet can affect the entire body. Symptoms such as ear fullness, palpitations, swelling, and dizziness may appear unrelated but can be understood as disturbances in the body’s fluid flow from a traditional medical perspective. Improving this flow can alleviate multiple symptoms simultaneously. While serious conditions must be ruled out through medical evaluation, complementary approaches such as acupuncture can help restore circulation by reducing muscular tension. In this framework, even coughing is seen as a mechanism related to fluid regulation. Managing fluid balance, including avoiding excessive intake of cold beverages, can support overall health. Simple methods like consuming black beans, known for their diuretic effect, may also help improve symptoms.

耳介画像鍼治療研究所・風の子堂鍼灸院
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17/04/2026

足の一点が全身をつなぐ ― 足臨泣に現れる身体のサイン
足の甲にある「足臨泣」というツボは、一見すると小さな一点ですが、体の側面に現れる症状と深く関わり、身体の側面同士をつないでいる重要なポイントです。
場所は、足の小指側、第4と第5の中足骨の間にある少しくぼんだところです。
腱と骨が重なるため少し取りにくいのですが、その分、的確に刺激すると非常に反応が出やすいポイントでもあります。
この部位の特徴は、神経との関係の深さにあります。
ここに現れる反応は、腰の下部、特に仙骨周辺の状態と連動していることが多く、足の小指側の違和感として現れることもあります。
長時間立っていたり、よく歩いた後に、このあたりが硬くなる経験がある方も多いのではないでしょうか。
それは単なる足の疲れではなく、神経や筋肉のバランスの変化が反映されているサインでもあります。
足臨泣は、体の側面を流れる胆経という経絡上にあります。
そのため、目の外側の痛みやめまい、脇腹の張り、首や胸の外側の違和感など、身体の側面に出る症状と関係が深いのが特徴です。
さらに、このツボは帯脈という腰回りを一周する流れともつながっています。
その影響から、月経の不調や骨盤内の問題、さらには尿のトラブルなどにも関与することがあります。
実際、足への刺激は神経を通じて骨盤内にも影響を及ぼします。
足臨泣にしっかり刺激が入ると、足裏まで響くような感覚が出ることがありますが、これは脛骨神経へ情報が伝達されたことを意味しており、骨盤底筋群への効果も期待できる状態と考えられます。
治療のポイントは、骨の間にある筋肉、いわゆる骨間筋をしっかりゆるめることです。
ここが整うと、足の軽さが大きく変わり、全身のバランスも整いやすくなります。
一方で、この場所は非常に敏感な部位でもあります。
武道では急所として使われるほどで、強い圧はかえって逆効果になることもあります。
首や脇、乳房の痛みやしこりなど、とくに体の側面に出ている症状に対応するポイントではありますが、こうした症状に対しては自己判断に頼らず、必要に応じて専門医の診察を受けることも重要です。
鍼灸は西洋医学と対立するものではなく、補い合う関係の中でこそ力を発揮します。
足の一点に触れることで、身体全体のつながりが見えてくる。
足臨泣は、そのことを教えてくれる非常に象徴的なツボといえるでしょう。
English Summary
The acupuncture point “Ashirin-kyu” (located between the 4th and 5th metatarsal bones) is closely related to symptoms along the lateral side of the body. It connects these regions functionally through neural and meridian pathways. Stimulation of this point can influence the tibial nerve and potentially affect pelvic floor muscles. It is particularly relevant for lateral symptoms such as pain or lumps in the neck, armpit, and breast areas. However, such symptoms should not be self-diagnosed, and proper medical evaluation is important. Ashirin-kyu illustrates how a single point on the foot can reflect and influence the entire body system.
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10/04/2026

膝の裏がすべてを語る ―「委中」と腰痛・神経の深い関係

膝の裏にある「委中」というツボは、単なる局所のポイントではありません。
ここには、腰や臀部の筋肉はもちろん、大腸などの内臓、骨盤内の臓器、泌尿器などの状態が現れてきます。

「委中」は、膝を曲げたときに最もへこむ部分、いわゆる膝裏の中央にあります。
この場所には、重要な血管や神経が密集しており、坐骨神経から分かれる神経も通過しています。

特徴的なのは、この部位には厚い筋肉のクッションが少ないという点です。
そのため、鍼やお灸の刺激がダイレクトに伝わりやすく、非常に反応が出やすい場所でもあります。

実際に触れてみると、膝裏の状態には個人差がはっきりと現れます。
柔らかい人もいれば、神経の走行に沿って硬さや違和感が出ている人もいます。

ここで重要なのは、膝裏の反応は単なる局所の問題ではないということです。

この領域は、腰や仙骨とつながる神経の通り道でもあります。
そのため、委中の変化は腰の状態や骨盤内の問題とも深く関係しています。

実際、腰痛の多くは明確な原因が特定できない「非特異的腰痛」と呼ばれています。
これは筋肉や関節だけでなく、神経、内臓、さらにはストレスなど、複数の要因が絡み合っているためです。

たとえば、長時間の姿勢の崩れは筋肉のバランスを乱し、血流を低下させます。
また、内臓の不調が反射的に腰の緊張を生むこともあります。
さらに、痛みの記憶そのものが残り、身体に異常がなくても再び痛みが出ることもあります。

こうした背景を考えると、膝裏の状態をみることは、身体全体のバランスを知る手がかりになります。

また、ふくらはぎのこむら返りも、この領域と深く関係しています。
これは筋肉の収縮と弛緩のバランスが崩れ、神経の興奮が過剰になった状態です。

水分や電解質の不足、冷え、血流低下、筋疲労などが重なることで起こりやすくなります。
特に明け方に起こるのは、体温や循環が低下するためです。

鍼灸治療は、こうした状態に対して血流を改善し、神経の過剰な興奮を整える働きがあります。
その結果、筋肉の柔軟性が回復し、痛みや痙攣の改善につながります。

委中という一点を通して見えてくるのは、身体は部分ではなく、全体でつながっているという事実です。
膝の裏に触れることが、腰や内臓、そして神経の状態を読み解く入口になるのです。

English Summary

The acupuncture point “Weizhong” (located at the center of the back of the knee) reflects not only local conditions but also the state of the lower back, gluteal muscles, internal organs such as the intestines, pelvic organs, and urinary system. This area contains important nerves and blood vessels, making it highly responsive to stimulation. Changes in this region are closely related to the lower back and pelvis. Most low back pain is non-specific and involves multiple factors such as muscle imbalance, stress, and neural mechanisms. Muscle cramps are also linked to nerve excitability and circulation. Acupuncture helps improve blood flow and regulate nerve activity, restoring balance in the body. The Weizhong point demonstrates how the body functions as an interconnected system.

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04/04/2026

なぜ鍼灸は「気持ちいい」のか ― 報酬系と日本人の脳の特性

鍼やお灸というと、「痛そう」「熱そう」という印象を持つ方が多いかもしれません。
しかし実際には、適度な痛みや熱さは、むしろ快感へと変わる性質を持っています。

この背景にあるのが、脳の「報酬系」の働きです。

たとえば、何もない場所を強く掻けばただ痛いだけですが、
虫刺されの部分を掻くと心地よく感じます。

これは、刺激が「ちょうどよい範囲」に入ったとき、
脳がそれを快として処理するためです。

鍼灸も同様で、繰り返し施術を受けるうちに、

「治療を受ける」という期待そのものが、報酬系を活性化させる

ようになります。

つまり効果は、単なる物理刺激だけでなく、
脳の認識とセットで増幅されていくのです。

この仕組みは、すでに医療の現場でも応用されています。

アメリカでは、依存症やPTSDの回復支援として鍼灸が用いられており、
薬に頼らず報酬系を調整する方法として注目されています。

カウンセリング単独と比較して、
再発率が低いという報告もあるのです。

さらに興味深いのは、「期待」が身体を変える現象です。

長年通っていた患者が、来院できない状況で
施術者の名前を思い浮かべながら膝をさすったところ、
痛みが軽減したという例があります。

また、治療院の土を持ち帰るだけで改善したという話も残っています。

一見すると不思議な話ですが、

脳は“意味づけ”によって身体反応を変える

という視点から見れば、十分に説明可能です。

私たちの身体感覚は、単なる物理的な現象ではありません。
脳の知覚と解釈によって作られています。

だからこそ、

脳の認識が変われば、身体も変わる

のです。

ここでさらに重要になるのが、脳内ホルモンのバランスです。

快感や意欲に関わるドーパミン、
不安や緊張に関わるノルアドレナリン、
そしてそのバランスを調整するセロトニン。

この三つの関係が、私たちの感じ方や行動を大きく左右しています。

興味深いことに、このバランスには民族的な傾向もあるといわれています。

欧米ではドーパミン優位の傾向が強く、
喜びや達成を外に表現する文化が発達しています。

一方、日本人はノルアドレナリン優位とされ、
不安を先に捉え、慎重に物事を整える性質を持っています。

この違いは、ものづくりにも現れます。

革新を生み出す力と、
それを安全に洗練させる力。

どちらも重要であり、
その背景には脳の働きと環境の歴史が関係しています。

そして日本では、もう一つ大きな要素があります。

それが「不安とともに生きてきた歴史」です。

地震や台風などの自然災害の中で、
人々は常に不確実性と向き合ってきました。

その中で発達してきたのが、

不安を鎮め、心身を整えるための文化です。

鍼灸や祈りといった行為もまた、
こうした背景の中で磨かれてきたものです。

単なる治療ではなく、

脳と身体の関係を調整する技術として、長い時間をかけて洗練されてきた智慧

といえるでしょう。

English Summary

Acupuncture and moxibustion may seem painful, but mild stimulation can activate the brain’s reward system, producing pleasant sensations. Repeated treatments enhance this effect through expectation, showing that therapeutic outcomes are influenced not only by physical stimulation but also by brain perception. In the U.S., acupuncture is used for addiction and PTSD, helping regulate reward pathways without medication. Neurochemicals such as dopamine, noradrenaline, and serotonin shape emotional balance, and cultural tendencies influence how these systems function. In Japan, a history of living with uncertainty has fostered practices like acupuncture and prayer as methods to regulate both mind and body.

03/04/2026

なぜ「身柱」は呼吸・神経・炎症に効くのか ― 背部反射と神経経路の交差点

背中のある一点が、呼吸・神経・炎症にまで影響を及ぼします。
それが経穴「身柱(しんちゅう)」です。

身柱とは、「身体を支える柱」という意味を持ち、
脊柱の中心に位置する極めて重要なポイントです。

位置は、第3胸椎棘突起の下。
ちょうど肩甲骨の高さにあり、

表層には僧帽筋、
深層には菱形筋群が存在し、

血管・神経ともに密集する解剖学的な要所です。

この部位が重要となる理由は、
単なる筋肉の問題ではありません。

身柱周辺は、腕の動きや首の支持による負荷が集中しやすく、
さらに現代ではスマートフォンや細かな作業によって、慢性的なストレスが蓄積する部位でもあります。

加えて、ここには重要な神経学的背景があります。

脊髄神経の後枝の走行は、
経絡でいう膀胱経とほぼ一致しており、

一方で前枝は肋間を通り、胸部や内臓と関係しています。

つまり、

内臓の異常が、背中の凝りや痛みとして現れる(関連痛)

という構造が、この部位には明確に存在しています。

実際の臨床では、身柱は次のような症状に応用されます。

咳嗽や気管支喘息では、
激しい咳によってこの部位の筋緊張が高まり、呼吸をさらに悪化させる悪循環が生じます。

ここにお灸を行うことで、
肺の背面に相当する領域へ直接的に作用し、呼吸機能の改善が期待できます。

また、炎症性疾患に対しても重要なポイントです。

皮膚の化膿や蜂窩織炎といった状態では、
温熱刺激によって血流が改善され、免疫細胞の集積や排膿が促進されます。

さらに鍼刺激は、
異物反応として免疫系を活性化させる作用を持ちます。

興味深いのは、国家試験では感染や発熱が禁忌とされる一方で、
実際の臨床では古くから炎症に対して高い効果が確認されてきたという点です。

小児においても、この部位は重要です。

いわゆる「ちりげの灸」として知られる方法では、
身柱に軽い温熱刺激を加えることで、子どもの様々な不調を整えます。

成長に伴い、身体のストレスの中心は上部から下部へ移動するため、
治療点もそれに応じて変化させる必要があります。

結論として、

身柱とは単なる局所のツボではなく、

筋・神経・内臓・免疫が交差する統合ポイントです。

背中に現れる反応を読むことは、
身体内部の状態を読み取ることに他なりません。

English Summary

The acupoint “Shinchu” (GV12), located below the third thoracic vertebra, plays a crucial role in regulating respiration, autonomic function, and inflammatory responses. Anatomically, it lies in a region rich in muscles, blood vessels, and nerve branches. The posterior branches of spinal nerves align with the Bladder meridian, while anterior branches connect to thoracic organs, explaining referred pain from internal dysfunctions. Clinically, stimulation of this point is effective for respiratory conditions such as cough and asthma, as well as inflammatory skin disorders, by improving circulation and activating immune responses. In children, gentle moxibustion at this point is widely used. Shinchu represents an integrated node where musculoskeletal, neural, visceral, and immune systems intersect.

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28/03/2026

声と波長 ― 自分の発する音が人生をつくる

私たちの身体は、さまざまな振動の総和として成り立っている。
そう考えると、人間にはひとつの特別な能力がある。

それが、音という振動を自ら変えられることである。

古来より、祈りや真言が大切にされてきた理由もここにある。
同じ言葉を繰り返し唱えるという行為は、
自分自身の振動を変化させる、非常に合理的な方法なのである。

この世界のすべてが振動であるならば、
自分が発する音を変えることは、
自分と同調する環境や人間関係にも影響を与えることになる。

実際に、声のトーンは人との関係性に大きく関わる。

上流階級では、子どもの頃から声の出し方を教育されることがあるという。
それは、その音に共鳴する人たちとの関係が、
そのまま自分の立場や安全に関わるからである。

私自身も、海外で「その声では信用されにくい」と言われた経験がある。
音は、それほどまでに人に影響を与える。

結局のところ、
その人が普段どのような言葉を使い、どのような音を発しているかが、その人そのものを表しているのである。

そして、その音に共鳴する人たちが、自然と周囲に集まる。

乱暴な音を出す人の周りには、それにふさわしい環境が生まれ、
穏やかな音を出す人の周りには、同じように穏やかな関係が築かれる。

それは日常の小さな動作にも現れる。

ドアを静かに閉める。
物音を立てずに道具を扱う。

こうした行為は単なるマナーではなく、
自分自身の波長を整える行為でもある。

そして、その積み重ねは、最終的に身体に現れる。

人の顔は、その人が日常で使っている言葉や音を、
そのまま映し出しているように見える。

荒い言葉を使う人は、その表情にそれが表れ、
穏やかな言葉を使う人は、自然と柔らかい表情になっていく。

つまり、私たちが発している音は、
まず何よりも自分自身に最も強く影響しているのである。

自分がどんな声を出し、どんな言葉を使っているのか。
そこに気づくことが、人生の流れを変える第一歩になる。

自然は、常にその通りの結果しか生まないのである。

English Summary

The human body can be understood as a system of vibrations, and one unique ability humans possess is the capacity to consciously alter sound. Practices such as chanting or prayer can be seen as methods of changing one’s internal vibration. Since everything in the world consists of vibration, the sounds we produce influence not only ourselves but also our environment and relationships. Voice tone and everyday sounds reflect who we are, and people tend to gather around those with similar “frequencies.” Even small actions, like how we handle objects or close a door, can shape our internal state. Over time, these patterns are reflected in our expressions and physical presence. Ultimately, the sounds and words we use most strongly affect ourselves, and becoming aware of them can change the direction of our lives.

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27/03/2026

「かんの虫」はどこに現れるのか ― 皮膚が語る子どもの状態

小児はりと聞いて、まず思い浮かぶのが「かんの虫」である。
夜泣き、不機嫌、偏食、食欲不振――かつてはこうした子どもの状態を、まとめてそう呼んでいた。

現代的に言えば、小児の神経症状に近い概念である。
名前は変わっても、そのような状態は今も変わらず存在している。

しかし実際の臨床では、「本当のかんの虫」と言えるケースはそれほど多くない。
多くは、いわば前段階である**「体の冷やしすぎ」**による一時的な反応である。

この場合は、生活習慣を見直し、身体を温めるだけで、比較的早く改善することが多い。

では、本当の「かんの虫」は何が違うのか。

それは、皮膚の状態である。

かんの虫の子どもは、皮膚全体が緊張し、まるで体が突っ張っているような状態になる。
落ち着きなく動き回るのも、この皮膚の緊張と関係している。

冷えによる不調が「寒くてソワソワする」のに対し、
かんの虫は、内側から突き上げるような緊張によって動かずにはいられない状態である。

この背景にあるのが、放熱機能の低下である。

私たちの身体は、食事・運動・思考などあらゆる活動によって熱を生み出す。
その熱は、

呼吸
発汗
排泄

などによって外へ逃がされ、バランスが保たれている。

しかし、体が過度に冷やされると、この放熱機能がうまく働かなくなる。
生命を守るために熱を内側に閉じ込め、その結果、外へ逃がす力が低下する。

この状態が続くと、皮膚に緊張が生じ、
やがて「かんの虫」や多動のような状態へとつながっていく。

では、すでに皮膚が緊張している子どもには、どう対応すべきか。

まず行うべきは、皮膚の緊張をゆるめることである。
つまり、もう一度「放熱できる皮膚」に戻していくことである。

その方法として有効なのが、
ゆっくりと皮膚に触れる刺激である。

FTA(Fine Tapping Acupuncture)の小児応用では、
皮膚をそっとなでるように刺激していくことで、徐々に緊張がほどけていく。

子どもの状態は、言葉ではなく、皮膚に現れる。
だからこそ、皮膚に触れるという行為は、
身体と心の両方に働きかける、極めて本質的なアプローチなのである。

English Summary

“Kan no mushi” is a traditional term used to describe various pediatric symptoms such as irritability, poor sleep, and feeding issues. In modern terms, it can be understood as a form of neurological or autonomic imbalance in children. However, many cases are not true “kan no mushi,” but rather temporary reactions caused by excessive cooling of the body. The key difference lies in the condition of the skin. In true cases, the skin becomes tense and rigid, reflecting an internal inability to dissipate heat properly. When heat cannot be released due to impaired thermoregulation, it accumulates inside the body, leading to tension and restlessness. Treatment focuses on restoring the skin’s ability to release heat, often through gentle tactile stimulation such as FTA, which helps relax the skin and rebalance the autonomic system.

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27/03/2026

脈は嘘をつかない ― 自律神経を読むということ

東洋医学において、脈診は最も信頼されてきた診断技術のひとつである。
それは、言葉では表せない「内側の状態」を、皮膚を通して読み取る行為である。

とくに重要なのが、**脈速(脈拍の速さ)**である。
これは、自律神経の状態を知るための、極めて信頼性の高い指標となる。

人は、無意識のうちに誤って説明してしまうことがある。
しかし、身体は嘘をつかない。

とくに自律神経――迷走神経を含む副交感神経の働きは、
意識ではコントロールできないため、その人の“本当の状態”をそのまま表す。

脈の速さ、強さ、リズム。
そのわずかな変化を診ることは、無意識の領域に触れることに等しい。

臨床では、15秒間の脈を測り、それを4倍して1分間の脈拍数を推定することが多い。
さらに、その中で

呼吸に合わせて脈が変動する現象――RSA(呼吸性洞性不整脈)

を観察することで、迷走神経の働きまで読み取ることができる。

ではなぜ、言葉よりも身体を優先して読む必要があるのか。

それは、人の認識にはしばしばズレが生じるからである。

私たちは、自分が見ているもの、感じていることを、
そのまま事実だと思いがちである。
しかし実際には、記憶や感情、解釈が加わり、
現実とは異なる形で再構成されていることが少なくない。

このように、主観と現実のあいだには乖離が生じうる。
だからこそ、言葉ではなく、身体の反応を手がかりにする必要がある。

身体は、その瞬間の状態をそのまま示しているからである。

脈診とは、まさにその“ズレ”を越えて、
身体の真実に触れるための技術である。

脈を診るとは、単なる計測ではない。
身体が語ることを、手のひらで聴く行為である。

そこには、自律神経の揺らぎ、呼吸との同調、
そして無意識に潜む状態が、静かに現れている。

English Summary

Pulse diagnosis is a traditional method of understanding the body’s internal state through touch. Pulse rate is a reliable indicator of autonomic nervous system activity. Humans may unconsciously misinterpret or misdescribe their own condition, but the body itself reflects the true physiological state without distortion. Subtle changes in pulse—such as rhythm and variability linked to respiration (RSA)—provide insight into vagal function and unconscious processes. Because subjective awareness can differ from reality, pulse diagnosis allows practitioners to access the body’s truth beyond cognitive bias by directly “listening” to physiological responses.

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20/03/2026

易とは何か ― 意識を離したときに見えてくるもの

私は一九九〇年から鍼灸を学ぶと同時に、『易』についても学んできた。
易といえば、心理学者C・G・ユングを思い浮かべる方も多いであろう。ユングは集合的無意識や共時性の概念を提唱し、易をそれらの領域へアクセスする手段として捉えていた。

易で占いを行うことを「易を立てる」という。
その過程には複雑な手順があるが、私はこの手順こそが、意識の介入を極限まで排除するための構造であると考えている。

すなわち易とは、意図や主観を可能な限り取り除き、
偶然の一瞬に現れる天の動きをそのまま写し取る行為である。

私の師であった故・小林三剛先生は、次のように語っていた。

「易に通じてくれば、易を立てなくとも卦が見えてくる。すべてのものに卦が表れている。」
「現象は潜象に通ず。」

この言葉は、ユングのいう集合的無意識や万物の連関と深く共鳴しているように思われる。

すべての現象は、見えない層とつながっている。
そして、それを捉えられるかどうかは、どれだけ意識を静められるかにかかっているのである。

結局のところ、易の本質もまた、
この世界に存在する物質や思考から、いかに意識を切り離すかという一点に収束する。

その状態に至ったとき、何かを求めたり操作しようとせずとも、
すでに周囲のすべてが、私たちに向けてメッセージを発していることに気づくのである。

『ザ・シークレット』の著者ロンダ・バーンは、後に次のように述べている。

「何も望まないことこそが、最強の引き寄せである。」

何かを望むという行為そのものが、すでにこの空間に存在している物質へと意識を結びつけようとする行為である、ということ。
結論的に言えば、「はなから、そんな必要は、微塵もなかった」ということなのだ。

English Summary

The I Ching can be understood as a method of removing conscious intention in order to capture the movement of reality as it is. Carl Jung associated the I Ching with concepts such as the collective unconscious and synchronicity, suggesting that it provides access to deeper layers of interconnected existence. The complex procedures used in I Ching divination serve to minimize subjective interference, allowing chance to reveal meaningful patterns. Ultimately, the essence of the I Ching lies in detaching awareness from intention and external attachments. When this state is reached, one realizes that all phenomena are already conveying messages, and that there may have been no need to seek or grasp anything from the beginning.

生命エネルギー方程式
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The Life Energy Equation
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18/03/2026

「舌と足で整える腎 ― 深層からのアンチエイジング」

「舌」と「足」、そして「食」。

この三つは、東洋医学と現代的身体観の両方から見ても、深いところで一つにつながっています。

まず東洋医学では、腎の経絡は足の底から始まり、下肢内側を通って体幹の深部を上行し、最終的に舌の付け根へと至ります。
つまり、足と舌は一本の流れの中にある、同一の系です。

一方で解剖学的にも、舌は単なる味覚や発音の器官ではありません。
頸部から体幹深部を通り、足底へと連なる“ディープフロントライン”という筋膜の連結の一部であり、全身の深層安定系に組み込まれています。

このため、

舌を動かすことは、体幹の深層筋や足の安定性に直接影響を与えます。

ここから見えてくるのが、非常にシンプルな原理です。

よく歩くこと
足をしっかり使うこと
舌を大きくしっかり出すこと

これはすべて、同じ深層ラインと経絡の両側から刺激を入れている行為になります。

特に舌を大きく出す動きは、腎経の終点である舌根部を直接刺激し、同時に舌骨周囲の筋群を介して体幹深部へと張力を伝えます。
結果として、自律神経や姿勢制御にも影響が及び、全身の調整につながります。

さらにここに「食」が加わります。

山芋(山薬)は、腎を補う代表的な食薬であり、
消化機能を整え、エネルギーを生み出し、生命力そのものを支える働きを持っています。

つまり、

足を使う(腎の起点)
舌を動かす(腎の終点・深層筋の活性)
山芋を食べる(腎を補う)

この三つが揃うことで、身体は深部から整っていきます。

アンチエイジングとは、特別なことではありません。

生命力=腎をいかに保つか。

そのための最も本質的な方法は、

歩くこと
舌を動かすこと
日々の食を整えること

この基本の積み重ねにあります。

English Summary

The tongue and feet are connected both through the kidney meridian and the deep front fascial line.
Tongue movement influences core stability and posture, while walking activates the origin of this system.
Eating yam (Dioscorea), a kidney-tonifying food, supports vitality.
Together, tongue exercise, foot movement, and proper diet form a fundamental anti-aging strategy.

しんきゅうコンパス
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