1971年に開院し、5年後の1976年にはNICUを開設して周産期医療に取り組み始めました。CTGモニタリング、超音波断層診断が臨床の場に登場し始め、”transfer in utero”、産科医療のregionalizationの意義がわが国でも認識されはじめた時期です。1981年には神奈川県で新生児救急システムが発足し、1985年には産科救急搬送システムとあわせ、神奈川県周産期救急システムが稼働することになり、北里大学病院は県央・北相地区の基幹病院として機能することになりました。2005年には総合周産期母子医療センターの認可を受け今日に至っております。1970年代後半から詳細な胎児診断が可能となり、fetus as a patientあるいはfetus as a humanとして胎児もまた医療の対象として治療が考慮されるようになっております。われわれのセンターでも積極的に取り組み、胎児
貧血に対する輸血、胎児腔水症、胎児水腫に対する、輸血、アルブミンなどの薬物療法、胎児頻脈に対する薬物療法、TRAP sequenceに対する内視鏡下臍帯血流遮断、ヒストアクリルブルー®による血流遮断、閉鎖性尿路障害に対する膀胱-羊膜腔シャント術、先天性甲状腺機能低下症に対する羊膜腔内甲状腺ホルモン投与による胎児治療などを行ってきました。
大学病院としては最も多数例の分娩を取り扱い、母児にとって安全で快適な分娩体験を提供すべく、選択的分娩誘発、無痛分娩による分娩管理を基本としております。1980年代中ごろまでは鎮痛・鎮静薬、麻薬、吸入麻酔薬を組み合わせたいわゆるバランス麻酔による分娩管理を行ってきましたが、その後は硬膜外鎮痛法を導入し、間欠的投与法から低濃度局所麻酔薬とオピオイド併用による持続投与法、産婦自らが痛みをコントロールするPCEA(patient controlled epidural analgesia)やさらには脊髄くも膜下麻酔との併用であるCSEA(combined spinal-epidural analgesia)による無痛分娩を提供しております。高血圧合併妊娠、心疾患合併妊娠などのハイリスク妊娠は硬膜外鎮痛法の医学的適応例でありますが、産婦の希望もまた適応と考えており、経腟分娩の約65%は区域麻酔による分娩管理例です。1961年に設立された「無痛分娩研究会」はその後「分娩と麻酔研究会」に名称を変更し、2009年には「日本産科麻酔学会 JSOAP, Japan Society for Obstetric Anesthesia and Perinatology」として活動を開始しておりますが、北里大学病院産科はこれまで中心的役割を担ってきました。今後もわが国での産科麻酔の発展に寄与すべくさらに努力する予定です。
母体救急疾患に関しては麻酔科、救命救急部など関連各科との緊密な連携のもとに、すべての搬送例を受け入れ集学的管理を行っております。