26/10/2025
漢方専門なつめ薬局の代表薬剤師:阿部です。
私は病院勤務時代に「薬で検査値が良くなっても体の元気・心のパワーが戻らない方」「退院してもまた同じ病気で入院する方」をたくさん見てきました。数値だけではなく、気持ちに寄り添い「心をみたす関わりをしたい」という想いを強く抱きました。その経験から、厳選生薬から漢方薬を自社製造で提供する漢方専門薬局を立ち上げ、一人ひとりに寄り添う関わりを大切にしています。
今回は頭痛のお話しです。
秋から冬にかけて、「頭が重い」「こめかみがズキズキする」「天気が悪いと痛む」といったご相談が増えてきます。
実は、季節や天候の変化は頭痛と深く関係しています。
【現代医学から見た「天気と頭痛」の関係】
「気圧が下がると頭が痛い」という声をよく聞きますが、これは気のせいではありません。
医学的にも、気圧や湿度などの環境変化が頭痛を誘発することが確認されています。
・エビデンス① 低気圧下では脳の血管が拡張し、三叉神経が刺激されることで片頭痛が起こりやすい。*1
・エビデンス② 日本気象協会の研究では、気圧変化と頭痛発作の発生に明確な相関があると報告されています。*2
・エビデンス③ 睡眠不足やストレス、ホルモン変動も片頭痛を悪化させる要因として確認されています。*3
つまり、天気や気圧といった「外からの変化」と、自律神経やホルモンの「内側の変化」が重なることで、頭痛が起きやすくなるのです。
漢方でいうところの「外邪(がいじゃ)」と「内因」が同時に作用している状態です。
【頭痛のタイプを漢方の視点で見極める】
漢方では、頭痛を「どこが痛むか」「どんな痛みか」「いつ痛むか」で見立てます。たとえば……
・こめかみがズキズキする → 肝の気が高ぶる『肝陽上亢(かんようじょうこう)』タイプ
ストレスやイライラが原因。気の流れが頭にのぼり、血管を広げます。
→ 天麻(てんま)や釣藤鈎(ちょうとうこう)などで鎮静を促します。
・頭全体が重だるい → 湿がたまる『痰湿(たんしつ)』タイプ
梅雨や台風の時期、低気圧で悪化しやすいのが特徴です。
→ 半夏(はんげ)や白朮(びゃくじゅつ)などで水分代謝を整えます。
・冷えると痛む →『寒湿』タイプ
寒さや冷えで血流が滞り、頭痛が起こるパターン。
→ 附子(ぶし)や乾姜(かんきょう)などの温める生薬を用います。
【からだを調える日々の工夫】
1. 首・肩を冷やさない
冷気は「風寒(ふうかん)」として頭にのぼります。ストールなどで温めましょう。
2. 朝食を軽くでも摂る
空腹時に気が下がり、頭に血が集まりやすくなります。胃腸が弱い方は温かい味噌汁だけでも良いでしょう。
3. 気圧変化アプリを活用
低気圧が近づく日は、前もって睡眠をしっかりとる・カフェインを控えるなどの予防が大切です。
4. 呼吸とストレッチ
デスクワークの合間に深呼吸。気の流れ(肝気)を巡らせましょう。
【頭痛によいとされる食材】
頭痛を防ぐためには、日々の食事で「気・血・水(すい)」の巡りを整えることが大切です。次のような食材を意識して取り入れてみましょう。
・気を巡らせたいとき:しそ、柑橘類、セロリなど。イライラやストレス性の頭痛におすすめです。
・血の巡りを良くしたいとき:黒豆、なつめ、くこの実。血行を促し、冷えやのぼせの改善に役立ちます。
・湿を除きたいとき:はと麦、冬瓜、生姜。むくみや頭の重痛さは湿によるものです。
・体を温めたいとき:ねぎ、にら、シナモン。寒さや冷えが原因の頭痛を防ぎます。
「頭痛は我慢すれば治まるもの」ではありません。
繰り返す頭痛は、体が発するサインです。
原因をたどって整えると、驚くほどすっきりする方も多くいらっしゃいます。
気圧やストレス、季節の影響を受けやすい方は、食材や養生を心がけても十分な対策とは言えません。体質そのものを見直す漢方薬によるアプローチが有効なんですね。