21/11/2025
~あはき柔整施術所数の推移~
以前、視覚障害者のあん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師の数について説明しました。我が国では江戸時代以前から按摩、鍼、灸は音楽と並び視覚障害者(かつて盲人と呼ばれた)の生業としてありました。特に按摩(あんま)は現在もあん摩マッサージ指圧師という厚生労働省管轄の国家資格として残っています。
あん摩マッサージ指圧・はり・きゅうの3つを頭文字をとって“あはき”と業界でも総称します。あはきは国家資格ですので毎年国家試験合格者が発表され、それが新規のあはき師になります。この合計数は毎年積みあがっていきます。各年の数字がどう推移しているかが分かりますが、実際に働いている(就業している)人数は国家試験の数字では分かりません。既存のあはき師が高齢などにより死去あるいは廃業することがあります。また新卒の新たなあはき師でもその仕事に就かない場合もあります。就業者数については別の統計をみないと分かりません。そこで厚生労働省が出している「衛生行政報告例」を参照し視覚障害者のあはきにおける就業者数を調べたのが前回のこと。
その「衛生行政報告例」には施術所数も掲載されていました。
私は持つ国家資格はあん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師の4つ。戦後、日本国憲法が新しく制定されて法律も新規になったとき。この4つの資格は一つの法律でまとめられていました。柔道整復師は柔整と略されるので4つをまとめて“あはき柔整”といいます。私はまさにあはき柔整師です。母校の呉竹学園東京呉竹医療専門学校はあはき柔整の資格が取れる学校です。結びつきが深いです。そしてあはき柔整は医療系国家資格でありながら法的に開業権が認められております。医師・歯科医師を除くと開業権がある資格は非常に珍しいです。最近は理学療法士や作業療法士、看護師らが“整体院”として開業するケースがありますが、法的には認められておりません。医師の指示の下、病院等の医療機関で業務をすることを想定した職種です。あはき柔整の開業権は特例といってよいでしょう。あはきに関しては視覚障害者の仕事を守るため、柔整に関しては整形外科が市井に無かった時代の名残と考えられます。
あはき柔整の開設する(※法的には開業ではなく開設という表現をします)店舗を“施術所”と法律上よびます。あはきに関しては出張専門での開設が認められているので店舗という表現をしました。各資格において施術するための決まった専用の場所が施術所です。なお医師の場合は医療機関(病院、クリニック、診療所など)であり施術所とは呼びません。あはき柔整に関して使用されるのが施術所という用語です。
全国のあはき柔整における施術所の数が統計で調査されています。こちらも2年ごとに集計を出していて西暦の下1桁が偶数の年の年度末時点での数です。それを見ると就業者数ではなく店舗の数が分かります。あはき柔整の施術所数がどのように移り変わっているのかデータからみていきましょう。
衛生行政報告例 / 令和4年度衛生行政報告例 統計表 隔年報
あん摩マッサージ及び指圧・はり・きゅう並びに柔道整復の施術所数、業務の種類・都道府県別
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00450027&tstat=000001031469&cycle=7&tclass1=000001207660&tclass2=000001207661&tclass3=000001207663&stat_infid=000040082882&tclass4val=0
〇あん摩マッサージ指圧の施術所数
2012年度末(平成24年度末) 19,880ヵ所
2014年度末(平成26年度末) 19,271ヵ所
2016年度末(平成28年度末) 19,618ヵ所
2018年度末(平成30年度末) 19,389ヵ所
2020年度末(令和2年度末) 18,342ヵ所
2022年度末(令和4年度末) 18,017ヵ所
2024年度末(令和6年度末) 17,531ヵ所
まずあん摩マッサージ指圧師が開設する施術所。一般的にはマッサージ院や指圧院といった呼び方が浸透しています。2012年度末から右肩下がりであん摩マッサージ指圧施術所数は減少しています。あん摩マッサージ指圧師全体の数は増えているのですが施術所は減っているのです。
〇鍼灸の施術所数
2012年度末(平成24年度末) 23,145ヵ所
2014年度末(平成26年度末) 25,445ヵ所
2016年度末(平成28年度末) 28,299ヵ所
2018年度末(平成30年度末) 30,450ヵ所
2020年度末(令和2年度末) 32,103ヵ所
2022年度(令和4年度末) 33,890ヵ所
2024年度(令和6年度末) 35,494ヵ所
鍼灸院、はりきゅう院、はり灸院と表記される施術所です。資格としてははり師・きゅう師と分かれていますが同時に両方取得することが多いので鍼灸とひとまとめになることがほぼ。まれにはりのみ、きゅうのみで保健所に登録して開設している場合があります。その場合は統計にどう入れているのか不明ですが数は少ないので鍼灸院の数という点では影響がないでしょう。年々増え続けて2012年度末から2014年度末の10年間で1万ヵ所も増加しています。
〇あん摩マッサージ指圧鍼灸の施術所数
2012年度末(平成24年度末) 37,185ヵ所
2014年度末(平成26年度末) 37,682ヵ所
2016年度末(平成28年度末) 37,780ヵ所
2018年度末(平成30年度末) 38,170ヵ所
2020年度末(令和2年度末) 38,309ヵ所
2022年度(令和4年度末) 38,374ヵ所
2024年度(令和6年度末) 38,595ヵ所
こちらはあん摩マッサージ指圧と鍼灸の両方を行う施術所。鍼灸マッサージ院やマッサージ鍼灸院といった屋号がつくことが多いです。当院はこのカテゴリーです。マッサージ院、鍼灸院よりも数が多く増加しておりますが10年間に千ヵ所弱なので鍼灸院に比べると増加率は低くなります。
〇柔道整復の施術所数
2012年度末(平成24年度末) 42,431ヵ所
2014年度末(平成26年度末) 45,572ヵ所
2016年度末(平成28年度末) 48,024ヵ所
2018年度末(平成30年度末) 50,077ヵ所
2020年度末(令和2年度末) 50,364ヵ所
2022年度(令和4年度末) 50,916ヵ所
2024年度(令和6年度末) 50,924ヵ所
最後に接骨院、整骨院という屋号となる柔道整復師の施術所です。数は4ジャンルのなかで最も多く増加しております。しかし直近の数では2022年度末から2024年度末の2年間でわずか8ヵ所しか増えていません。全国を対象としていますから8ヵ所というのは相当少ないです。柔道整復の施術所数は頭打ちで次のデータが出る2026年度末には減少に転じているかもしれません。
全体をグラフにしてみると見えてくることがあります。
あん摩マッサージ指圧の施術所は減少していっております。これはあん摩マッサージ指圧単独の施術者が減っていることと関係するでしょう。特に視覚障害者であん摩マッサージ指圧師従業者数は減っています。施術所は必ずしもあん摩マッサージ指圧師が開設するとは限らないのであん摩マッサージ指圧師減少が数字と直結しているかは断言できません。一方で就職先、就業先が減ることになります。働き手がいないから施術所が減っている場合を想定できます。私のように一人で行っているところと大勢の従業員を雇っているところの区別が数字には出ません。絶対的なあん摩マッサージ指圧師の数が少ないことは関係していることでしょう。
新規にあん摩マッサージ指圧師を養成する専門学校(晴眼者向け)が作れないことと異なり、1999年の裁判で鍼灸師養成施設を新設することが解禁された鍼灸業界。あん摩マッサージ指圧師に対して鍼灸師は大幅に増えています。伝統校と言われる裁判以前からある学校の多くは本科・鍼灸マッサージ科と言われる3年間であはきが取れる科があります。私もそのような本科出身で、あん摩マッサージ指圧師になるために鍼灸も同時に取りました。ですからあん摩マッサージ指圧鍼灸の施術所(=あじさい鍼灸マッサージ治療院)を開設(開業)しています。あはき師よりも鍼灸師の就業者数の方が裁判以降は多いと思われます。新卒の数から類推するに。ただ施術所としては鍼灸だけ、あん摩マッサージ指圧だけにしないであん摩マッサージ指圧鍼灸で保健所に登録する方が無難であるはず。開設者が資格を持っていなくても雇えばいいのですから。その施術所で登録していない種類の施術は当然行えませんので「あん摩マッサージ指圧鍼灸の施術所」に最初からしておくことが有利です。ただし保健所に登録しないで勝手にやっているという場合はあると聞くので現状は色々あるでしょう。今後は保健所がしっかり取締りをすることになるとこの数字に大きな変化があるかもしれません。
柔道整復の施術所は元々多かったのが2020年度末まで増えて、そこから横ばいになっています。1999年の裁判は本来、柔道整復専門学校の新設を認めない国(旧厚生省)を相手にしたもの。そこで柔道整復師養成施設(専門学校、大学)の新設解禁となります。全国14校だけだった柔道整復専門学校は大学を含めて150校以上にもなります。柔道整復師の増加数は鍼灸師のよりも大きく施術所も自ずと増えていったのでしょう。しかし施術所の数はコロナ禍あたりから増加数は鈍化していることが数字に表れています。理由は様々なものが挙げられるのですが、ネガティブなものが多いといえます。療養費不正請求による逮捕、柔道整復師国家試験漏洩、公益団体元幹部の逮捕といった臨床・教育・業界団体の3分野で問題が起きてきました。新卒の柔道整復師の数が減少傾向となっており施術所数が増えないことに相関があると思われます。2026年度末(つまり2027年3月31日現在)の数字は減少に転じていると予想しています。
ちなみに私は柔道整復師ですが柔道整復の施術所登録をしていません。やろうと思えばできましたがやりませんでした。鍼灸と整骨院を同じ建物で併設している業態がたくさんありますが、保健所の登録は別々になります。よってあん摩マッサージ指圧鍼灸はあっても「あん摩マッサージ指圧鍼灸柔道整復」という区分にはなりません。あん摩マッサージ指圧鍼灸が1、柔道整復が1という統計になります。店舗はあっても“柔道整復の施術所”だけ廃業しているというところはあると思います。というより何軒か知っています。ですから外から見ると特に変わった様子はないけれど法制上は、ということがあるのでしょう。
日本の人口は減少に転じ、これから加速度的に人口減少が進みます。コロナ禍がそれを更に進めました。あはき柔整も減っていくことが自明の理。施術所数も自ずと減っていくと予想できます。それはやる側も利用する側も減るだろうという単純な理由で。その自然減に対して社会的要因が数字に反映するものと思いますし、結果として出た数字から社会的要因を推測できるわけです。データ自体は都道府県単位で数字が公表されているので都道府県別に数字をみるとより分かることでしょう。ちなみに4つの施術所分野全てで全国最大数はやはり東京都です。東京都に人口の10分の1が集結しているのですから納得です。統計データから現状を読み取り、未来予測をすることは業界の将来について考える機会になります。
甲野 功
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